1.アーバン・アトラスを目指して / ヨーロッパ

欧州環境局(European Environmental Agency: EEA)は、2002年7月28日に『アーバン・アトラスを目指して:ヨーロッパ25都市エリアの空間データ評価』という報告書を発表した。ヨーロッパ25の都市エリアにおける土地利用データベースの作成を通じて、都市のダイナミクス(動態)を測定するプロジェクトの最初の調査結果を広めることが、この報告書の目的である。

昨今、都市の成長が浮かび上がらせる課題は、空間的な統合を必要とする傾向にある。そこで、指標などの観測ツールの作成は、都市の持続可能性を掲げる地方自治体(ならびに国家そして欧州レベルの政府)を支援するための、客観的で比較の基盤となる情報を提供することを意図している。

地域の持続可能性の指標は、従来の一般的な環境指標を超えたものでなければならない。土地利用計画の策定プロセスを支援できるよう、空間を分析し予測する必要がある。
都市の発展とダイナミクスを評価する、複雑なデータベースに基づくプロジェクトやプログラムから学べること、中でもこれらが提供する比較可能な情報は非常に重要であり、他の都市エリアにも応用されるべきである。このような取り組みは、空間指標の利用に新しい示唆を与え、地域の持続可能性のための共通指標の開発に貢献するであろう。したがって、持続可能性のための観測を向上させ、さらには欧州委員会の都市環境専門家グループが提案したヨーロッパ共通の指標の検証および改善の一助となるであろう。

この報告書は、EF-Aが評価報告・活動をする際に有用な情報を、より広範に普及させようと発表したものである。地球環境を考える欧州トピック・センターが設立されたこと、環境評価の中核となる指標が審議中であること、そしてEF-Aの国ごとの焦点と都市環境レファレンス・センターの果たす役割を考慮しつつ、こういった普及活動や、新しい指標とその応用に関する討議、そして自治体の参画をより盛んにする方法が模索されなければならない。

土地利用、エコロジカルな都市リニューアル、都市のスプロールの理解と予防、そして統合された都市マネジメントは、ヨーロッパ全土でより重要な課題となりつつある。しかしながら、持続可能性を重視した土地利用か否かを測るツールは未だ不十分であり、もしくは複数の団体に分散しているのが現状だ。関係者の協力を促し、包括的な枠組みを作るための鍵は、主な課題のある都市への戦略にあるだろう。

都市の土地利用において最も今日的で緊急を要する課題に、<都市のスプロール化>、<土壌の汚染>及び<緑地の減少>がある。

<都市のスプロール>
ヨーロッパの都市に共通の現象で、持続可能性のない土地利用を招き、自家用車への依存度の上昇、交通の混雑、エネルギー消費および有害な排気の増大が特色である。

<土地の汚染>
都市開発が工業からサービス中心に転換する中で、見捨てられた古い工業地帯が都市区内にいくつか残り、俗に「ブラウンフィールド」と呼ばれるこれらの土地は、多くの場合汚染されており、浄化のためにかなりの財源を要する。このような土地の汚染は、都市開発における「グリーンフィールド」つまり緑地の、より拡大した転用につながり、都市のスプロール化の一端となっている。

<緑地の損失>
都市エリアに現存する緑地にも年々建物が建てられ、生物の多様性、ならびに都市に住む人々の健康と生活の質を脅かしている。

土地利用を含めた都市の問題は、複雑かつ広範囲に及ぶため、異なる政府レベル、他分野の政策、そして部署間での協力が不可欠である。そこで「協力」をキーワードにした、新しい統治方法および新しい情報ツールが必要であろう。

そこで、最近の6EAPを巡る議論では、目標を設定し、進行を監視することの重要性を明示されている。そのためには、都市の土地利用を測定する指標の運用が肝要であろう。にもかかわらず、観測ツールとして指標を使っている様々な業務委託サービス、都市ネットワーク、そして国や地域からは、現在活動中の団体間の協力や技術的な連携が未だ不十分で、それらを確実にしたいという声が上がっている。“ヨーロッパ・コモン・インディケーター(欧州共通指標)”はこういった対話を促す契機となるであろう。

欧州委員会(EC)の制定した2001−2006年度向けのガイドラインは、ヨーロッパ空間開発パースペクティブ(ESDP)の目標に沿った研究と持続可能性を重視した都市開発の構造の必要性を説いている。(このガイドラインは2000年の12月に地域開発委員会によって採用された。)データベース、地図作成ツール、開発のための指標、そして市町村や国の政策が地域に与えるインパクトを評価する方法を整備することを勧めている。このガイドラインの枠組みとESDPの目標とが融合して、7種の土地指標が示された。それらは、地理的な位置とアクセスのよさ、地域の統合、経済状、自然遺産、文化遺産、土地利用や社会的な統合による圧力、である。

欧州環境局の報告書『アーバン・アトラスを目指して:ヨーロッパ25都市エリアの空間データ評価』は
http://reports.eea.eu.int/environmental_issue_report_2002_30/enからダウンロードできる。


2. キャンベラ市の新空間計画 / オーストラリア

2002年4月、キャンベラ市は、キャンベラの空間がどのように計画されていくかのアウトラインを示す『キャンベラ空間プラン・キャンベラの将来計画』を発表した。

キャンベラ市の将来の繁栄は、あらゆる点において持続可能性を備えた都市になるか否かにかかっている。経済協力開発機構(OECD)は、持続可能性を備えた都市の性質として以下の事項を掲げている。
グローバル経済における競争力を拡大すること
社会的な結束を強化し、コミュニティーに権限を与えること
パートナーシップとリーダーシップを両立しつつ、場所の特性と多様性、すなわち質を維持すること
意思決定において柔軟性をもつこと
都市の中心と周辺双方において、都市の成長を管理すること
都市と周辺地域のよりよい連携を図ること
持続可能性を促す実践を奨励すること
経済、社会、そして環境面での目標を統合した政策を採用すること

キャンベラ市政は、自立した政府として多大な変化を経験しながら、上記の特性を発展させるべく尽力してきた。

『キャンベラ空間プラン』とそれを支える戦略によって、キャンベラはより高いレベルの持続可能性を獲得していくであろう。このプランと戦略は、明瞭な方向性、そして吟味された方法とはじめの一手を兼ね備えた長期的ビジョンを携えており、柔軟性も確保されている。この柔軟性への考慮は、社会が予測を超えた速さで変化することが度々あるという認識の表れである。それ故に、ビジョンとその到達の方策を正しく設定する、ということが何よりも重要なのである。

『キャンベラ空間プラン』とその戦略は、徹底的な議論と協働の帰結であり、コミュニティーの関連箇所すべてが関与した過去の協議のプロセスを含む、過去から現在にわたる活動に基づいている。2002年から2003年にかけての未来のキャンベラ像を考えていく過程で、個人と地域の幸福がキャンベラ全体の幸福といかに相互賦与しているか、人々はさらに理解を深めるであろう。

『キャンベラ空間プラン』と付随する戦略の発展のプロセスに、より多くのコミュニティーの参加を可能にするために、来る数カ月間、キャンベラ市は多岐にわたる報告書を発表し、協議を進めていく。市は、持続可能性のための協議事項を実行に移す意向を示しており、その一端として専門のオフィス「Office of sustainability」を設置する。2002年の空間プランの草案を発展させていくことも、この事項に含まれる。
キャンベラ市は計画都市として知られているが、他の都市と同様、急激な変化を経験してきたし、将来はさらに影響が大きくなるだろう。都市に起こる変化の多くは制御できないが、これらの変化はキャンベラ市が21世紀において創造的で活発、そして包括的な都市として生き残っていくために必要な課題を投げかけてくる。

経済の構造改革、グローバリゼーション、新技術、価値観やライフスタイルの変化などは、それぞれが都市に影響を与える。キャンベラ市では高齢化が進み、一人もしくは二人世帯の数が増加している。キャンベラ市のオープン・スペースのネットワークを守ることと同様に、住宅を適正な価格に抑えることが課題となっている。ショッピング・センターの改善、良好な住環境の保全、そしてキャンベラ市の最も評価されている「ガーデン・シティ」としてのイメージを継承していくことも必要である。

現在、キャンベラ市の交通は自家用車の使用に大きく頼っているが、持続可能性を備えた発展を可能にするべく、交通と土地利用計画を統合するアプローチを模索する必要がある。交通はそれ自体を目的とするのではなく、人と物とサービスとの行き来を促進させるためにあるものと考えなければならない。
好ましい未来を自覚的に創造することから生まれる課題に取り組み、それを達成するべく努力していくのか、ただ静観して未来へと押し流されていくのか。キャンベラ市はこの重要な選択をしているのだ。

すなわち、『キャンベラ空間プラン』はキャンベラが選んだ将来に向かうためのタスクのひとつである。このプランはキャンベラ市に以下の事項を視野に入れた、時代に合った計画の枠組みを提供するであろう。
都市の密度と強さを含めた、キャンベラの将来の都市空間
持続可能性が開発のパターンに与える影響
工業と商業用地のニーズの識別を含めた、経済成長が市のレイアウトに与える影響
都市の中心の役割
交通計画と土地利用計画の統合と公共交通の振興
「緑の資産」として維持・保有されるべき自然および人工環境
市の成長の速度とそれが空間的な構成に与える影響

『キャンベラ空間プラン』は問題解決のための枠組みであり、他の戦略と連動して持続可能な都市の未来を築くものである。このプランは社会・交通・経済、それぞれの分野の政策において、空間的な文脈での実行を支援するであろう。

『キャンベラ空間プラン』は、地区の計画・法定の計画・住居政策計画やマスター・プランなど、すべての空間計画と明確で直接的な関係をもっている。つまり『キャンベラ空間プラン』は、個々の計画の活動と過程が寄り集まり、キャンベラの全体像の枠組みとなり、それぞれの計画と相互に影響していくのである。

『キャンベラ空間プラン』は、人々のための都市計画という現代的なアプローチで展開していく。つまり、すべてのキャンベラ市民が市の発展に意見ができる様々な機会を提供しているということである。
キャンベラの開発については、以下のサイトでも詳しく紹介している。
http://www.palm.act.gov.au