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1. 世界銀行の新しい都市開発支援戦略 世界銀行が新しい都市開発支援戦略を発表した。「過渡期にある都市:都市部、地方行政問題の戦略的展望」。この新しい戦略は、各国の国益の多くは都市化から得られるという展望の上に成り立っている。ここでいう都市化とは必ずしも人口統計的な数量化から判断されるものではない。都市の変化は、人々の物理的集約、土地利用パターン、社会構造と社会参加、そして経済効果などにも影響を与えるものである。これらすべての次元における変化が、個々人の生活と都市資源の需要と政策に影響する。都市の変異は,国が違えばそれぞれ違った都市形成のシステムへと展開し、また、同じ国の中でも別の都市や町では、貧困の規模や性質,投資と雇用のパターンや成長率、交通の利便性、居住地や商業地の拡散(スプロール)、環境の質や文化的娯楽性などにおいて似ても似つかないような結果を招くことがある。 世界銀行の新しい戦略は都市や町が(他の経済的事象と同様)、多様な可能性とライフ・サイクルを持っており、公的政策が都市圏域の性格形成と国家発展に大きく貢献できるとの見解を反映している。 経済活動の中で都市の地位や地方自治体の政治的権限は劇的に変化している.都市生活の質と都市の持続性に関する問題に対する関心事(アジェンダ)が増しており、都市政策に対する世界銀行からのアドヴァイスと経済的支援への需要も増え、こういった事象が世界銀行の応答を導くための新しい戦略的展望を望んでいるのである。都市開発ポートフォリオを再編したり、既存のものから強力なものを抽出すること、これらはいずれも重要なことではあるが,必要なのはこれらを超えた方針を打ち出すことである。世界銀行は、都市の所産に影響するような都市と国と地方自治体の政策を統合した展望を検討している。 世界銀行の新しい戦略は,都市の持続性の観点から、次に挙げるような項目への支援を重点的に行うものである。 1. 繰り返し可能性:Replicability − 持続的な所産の成長を促進する。特に都市の貧困層の生活水準を、その需要と相応したレベルまで引き上げる。 2. 妥当性:Relevance − 拡散傾向にある都市問題に幅広く対応するために、能力と知識を横断的に活用し、フレキシブルなデザインによる支援、実現性の高い計画期間、そして多種多様なクライアントの要求を満たす妥当な投資額の設定。 3. 到達性:Reach − 従来型の都市開発プロジェクトや他の市場介入に比べ,より多様な地方自治体に直接的(あるいは間接的)な支援を確実に行き渡らせる。これらの戦略の目的を達成するために、世界銀行は「総括的な戦略、及び選択的な介入」によって都市と地方自治体を支援していく。世界銀行は、空間的、社会的、政治的、環境的、金融的、経済的といった個別の文脈が統合されたもの、あるいはかつて世界銀行が集中的に取り組んできた国家の経済活動のようなものとして都市経済を捉えるパースペクティヴを発展させる必要がある。世界銀行にとって都市圏域とはインフラストラクチャやプロジェクトのための土地集合体ではなく、さらに大きな国というシステムを部分的に構成する「生きた組織」なのである。マクロ経済における都市システムの貢献、都市ネットワークにおける都市の発展の制約と可能性、こういった問題への理解を共有することが世界銀行による支援活動の枠組みとアジェンダの共有の一助となる。 このような戦略的、分析的な仕事を通して世界銀行が自らの系列都市の要求に対して貢献するには二通りの方法がある。そのひとつとして世界銀行が提供するものに、地方自治体における経済や経営の問題に対する知識的展望がある。これは地方自治体のニーズと関心を、中心都市や世界銀行の他のグループとのインタラクションを通して表出(顕在化)することにつながる。もうひとつの方法は都市のスタッフが提供する都市開発の空間的インパクト、特に住居へのアクセス性、雇用や環境の持続性における影響に関する分析である。 この戦略を通して世界銀行は、どの都市と協働し、どの活動を支援すべきか選定し決定する。世界銀行は、貧困と不平等に対する問題を共有し、直接的及び間接的介入をうまく組み合わせたプログラムを示す複数の投資家のいる都市と、重点的に協働することになる。世界銀行はまた、自力発展を目指す都市への支援を目的とする。支援対象都市の選定のその他の基準として、国家との戦略的討議によるものがある。しかしながら、都市開発の総括的アプローチは、すべてを一度に行うものとして解釈されるべきではない。 この戦略は、世界銀行が、差し迫った都市開発の挑戦に対する支援規模を拡張することも意味する。この規模拡張は、多様なアプローチとさまざまなレベルの活動を含む。直接的な支援を補完するために、世界銀行は多数の都市や町に対して、プロジェクト、補償金、世界銀行研究所、あるいは他の機関との協力体制などを通して世界銀行が支援できる制度再編を通した間接的な技術的支援と投資の「卸売り」をますます強調していく。一部の国や地域における支援の規模拡張の一環として、いくつかの大都市が特に重点的に支援されることがある。 新しい戦略は以下の四つの主要な活動が示す通り、世界銀行による支援の目的と、持続的都市開発のための流動的協力体制のためのものである: 1. 国家的都市戦略の組立て 2. 都市開発戦略の促進 3. 貧困への支援プログラムの拡張 4. 建築容積に対する支援の拡張 世界銀行、過渡期にある都市:都市と地方自治体問題の戦略的展望。 全容は下記からダウンロード可能。 http://www.worldBank.org/html/fpd/urban/ /publicat/cities_in_transition_full.pdf 2. アメリカ四都市における市街地再構築の実践 合衆国住宅都市開発課が「市街地再構築のフィージビリティ(実現性)に関する報告:四都市における再構築調査報告」を発表した。この報告書はエル・パソ、ミアマ、ミルウォーキーそしてナシュヴィルにおける市街地再構築関連事業に関する質的調査の結果である。再構築は住宅ストックの取り壊しを意味する。 再構築は限られた規模に対して経済発展の道具として用いられている。再構築は、特殊な職業能力のない非雇用者に対して職業訓練と雇用機会を創出する。この目的に向けて、再構築は労働人口開発の一要素として取り込まれており、プログラムへの参加者に建設関連の仕事に向けた能力と市場価値を与えるよう機能している。経済発展の媒体としての再構築のフィージビリティは、再構築事業のタイプと再利用物資の市場価値に依存する。報告書の中では、二つの異なるタイプの再構築事業が示されている:躯体も含めた再構築と躯体を含めない再構築である。 再構築への障壁は、再構築事業のタイプによってさまざまである。再開発事業からのプレッシャーや関連プロジェクトからの工期期限が都心部における再構築事業への主要な障壁となるが、躯体を含めた再構築の方が、躯体を含めない再構築に比べてこれらの障壁から受ける影響は大きい。躯体を含めた再構築は労働者に依存したプロジェクトであり、現場での解体と住宅建設市場に大きく依存している。 躯体解体に対して付加しなくてはならない労働者費用は、安定した価値のある再利用可能建築資材の容積の引き上げで埋め合わせる必要がある。躯体建築資材の調達は民間セクター主導の再開発に見られる時間的な制約により限定的にならざるを得ない。環境への配慮、建築基準の要求、そして住宅保存政策も躯体解体事業における再生可能な建築資材の供給の制限となる。これらの要因により、公共セクターによる躯体解体への資金的援助が必要となってくるのである。 経済再生の道具として、再構築は将来的に公的サポートに頼ることになる。公共セクターを巻き込むことは、経済再生を目指した再構築関連事業の立ちあげには不可決である。再構築関連経済再生プログラムの持続性は、ほとんどの場合、公的支援なしにはあり得ない。下記の運動は、再構築を経済再生術として活用するものである。 ・州と地方都市の行政機関は再構築に相応しい地域を選定できる。再構築事業として可能性のある都市や地域は、基本的には大都市、都市部そして著しい容積の空きビル、廃墟のある軍事拠点、あるいは大規模再開発の求められている地域である。 再構築事業の効率性を高めるために、都市は修復の必要な住宅ストック、歴史的街区など建設資材の再利用の恩恵を受けることのできる地域を特定できる。 ・州と地方都市の行政機関は,建築資材の再利用と再構築事業を展開している会社や組織がかかわる地域資源再生公園の開発に対して報奨金の受給があることを勘案できる。それには彼らの開発を促進し強化することを目的とする限りでの交通価格の縮減も含みます。家具、住宅、その他関連する用途において、建築資材の再利用に関わる事業や組織が発展することは、都市部での新規事業の機会やそれらに付随する小規模なビジネスの発展へとつながるかもしれない。 ・地方都市の行政機関は,再開発による負荷がなく再構築に適したと認定されたプロジェクトに対して再構築補償金を与えるための助成金と賞金のシステムを施行することを勘案できる.このシステムは再構築を含めた契約や承諾に対してボーナスポイントを分配する。これは再構築に相応しい地域において職業訓練、小規模ビジネス、そして雇用機会を生み出す。 再構築業界の将来動向を予測するのは困難である。再構築マーケットのフィージビリティは、地域の資材の供給のみではなく、圏域の経済に依存する。短いスパンでは、多数の空きビル、廃墟あるいは強大な再利用市場のあるコミュニティが再構築事業の展開を継続できることだろう。 再構築フィージビリティ(実現性)に関する報告:四都市における再構築調査報告 全容は以下のウェブからダウンロード可能。 http://www.huduser.org/publications/destech/deconstruct.html 3. アルメニア地震の被災地における住宅再生戦略 2001年、依然20,000世帯が1988年のソビエト・アルメニア地震の被害から仮設住宅での避難生活を余儀なくされている。都市研究所は、モスクワ都市経済局とアルメニア・アメリカン大学イエレバン校の協力を受けて、アルメニア共和国政府に対して「被災地における新しい住宅政策」を提案した。その目的は避難所生活を余儀なくされている地震被害者に対して永久住宅を提供し、また被災地でもある都心部を再生することである。この戦略の鍵となるのは、新規建設に依存しない代替案の提案にある。1989年モスクワにより建設された新しい都市は、廃棄物置き場として建設途中で投げ出されたままだが、優れた計画意図を持つものが多い。それらの荘厳な計画は今では途中放棄されたり、延期されたままだが、今日の経済状況のリアリティに基づいた計画であると捉えることができる。世界銀行による1998年から1999年の資金援助を受けて都市研究所により企画された政府の新しい戦略は、消費者志向(ディマンドサイド)の方針に基づいたものとして、都市の刷新を促進しつつも、適確な受益者に、借り受け住んでいた仮設住宅の型に応じて選択肢を提供するものである。 解決策は“3つのR”として要約される。再分配Redistrubution(市場原理に従って自発的に)、補強Reinforcement(震災により廃墟となった集合住宅の補強)、再生Renovation(郊外と田舎における個人住宅の再生)。アメリカの国際開発局(USAID)は近年(2001年4月)アルメニア被災地再生プログラムとして2年間にわたり2,000万USドル(日本円で約20億円)を再分配部門(住宅証票)と再生部門(住宅改善資金)に対し提供することを発表した。住宅証票の適用はUSAIDのアルメニア・ギュムリ地区における実験的プログラムでの成功を背景としている。そこでは300世帯以上が一世帯平均約3,300ドル(約33万円)のコストで迅速に永久住宅への移行を実現できた。アルメニア政府は、カリフォルニアのリンシー基金の協力を得て、最後の“R”(廃墟となった被災住宅の補強)に取り組んでいるところである。 “3つのR”の戦略は、以下の三つのプログラムのバランスを取りながら進められる。 1. 空間計画戦略は、段階的プログラムとして古い都心部に適応されるものだが、(“ドミックス”と呼ばれる)仮設住宅の段階的な除去作業と(おびただしい数の住居ユニットがこの土地に残されている)、集合住宅補強・建設事業とが連携して行われる。これは経済的妥当性が見込まれ、市場原理に裏付けられる場合は同じ敷地を用いて行われる。この「敷地から敷地」へと展開される段階的都市再生は(低価格で最大の住居が建設される地区から始まる)利益の分配に直結するもので、政府や資金提供者にプログラム遂行のフレキシビリティ(融通性)をもたらす。(毎年,計画敷地の選定は予算配分、ローン、報酬などを勘案し決定される。) 2. 社会計画戦略では、政府が作成する‘ウェイティング・リスト’はすべてのコミュニティを網羅し、上述の選定方法に対して別の方法(例えば,地理的条件に基づいた選定)などを横断的に検討するものとなることを推奨する。ドミック(あるいは他の仮設住宅)は、計画地として選定される適性として二つの条件を満たす必要がある。当初の住宅が地震で全壊していること、それから(政府や寄付者から)その損失に対する住宅補償が受給されていないことである。以前の社会主義システムにおいて設定された‘優先的カテゴリー’は適用されない。実際の収益性は、新しい調査により設定される条件(‘ターゲッティング’)により勘案される。 3. 経済・財政計画戦略は、適応資格のある住宅に対し、(すでに市場に出ている)永久住宅の購入に即座に使用できる‘住宅購入証券’(HPC)と呼ばれる証票を受け取ることのできるオプションを提供する。(HPCは避難所として転用されている学校、美術館などの地域施設を ‘開放’することにも活用できる。) HPCの市場におけるフィージビリティ(実現性)の持続性は、新規に建設される住宅の竣工量の増減に影響する。(実際,多くの住宅が未完成のまま残されている。)証券の流通は‘政策バルブ’により制御される;HPCは成功すると見られる‘住宅の完成Home closing’にのみ基金を適用する。それは、黒字となる住宅ストックを優先的に建設し、市場に再分配すること、そして/もしくは需要に応じることの出来る住居を素早く建設し、費用のかかる新規建設に着手する前に建設することを目的とする。 (“住宅改善”基金やローンによる、空き家のまま建っている損壊集合住宅の補強)USAIDの新しいプログラムは、資本投資の動力としても重要な都市計画と経済発展計画を含むものである。住宅証票と報奨金は、個人投資のように比較的控え目なものであるが、集積されれば地域経済への大きな注入に繋がるものとなる。投資者のこのような協力を得て、アルメニア北部地域はようやく、3年以内に震災からの復興を期待できるところまできている。(スティーブン・アンリアン,アルメニア・アメリカン大学アルメニア校,都市研究所)。 |