01 要約  
     
 
ボーダーラインをひだ状にグニャグニャ折り曲げることで、二倍のパスポートコントロールを設置し滞ることなく観光バスに駆け込める客船ターミナルを設計する。こうして乗客にとって興味のない客船ターミナルに見向きもふれずにチューリップ畑に行き写真を撮り、飾り窓を冷やかし、コーヒーショップでマリファナを楽しむ時間を稼ぐことができる。
02 背景  
     
 
アムステルダム国際客船ターミナルを襲うツーリズムの波は500人乗りのB777型の旅客機15機が同時に中央駅の裏に着陸する衝撃に等しい。
02 背景  
  a) 客船ターミナルのビルディングタイプ:障害物競走  
 
住宅が都市部、山間部問わず建てられるのに対し、国際客船ターミナルの敷地は常に水際である。
そのため海上の交通機関からバス、タクシーなど陸上交通機関の接点である。
02 背景  
  a) 客船ターミナルのビルディングタイプ:障害物競走  
 
さらに空港同様、国境、つまりパスポートコントロールをはらむビルである。
02 背景  
  a) 客船ターミナルのビルディングタイプ:障害物競走  
 
その他にもターミナル内で多くの境界線を大量の乗客が通過したり、物が受け渡しされる。
そのためのそれらを通過させるインターフェース、具体的には窓口、発着場が多く必要となる。
02 背景  
  b) ツーリズム:10時間のゴーストタウン  
 
(1) かみかぜ・ツーリズム
  5〜10月に集中してフェリーは大西洋上を一週間かけてアムステルダムにやってくる。
02 背景  
  b) ツーリズム:10時間のゴーストタウン  
 
ところが停泊料金が高額なため滞在はわずか10時間である。
乗客が突然やってきて10時間でいなくなる。
さらに彼らは客船ターミナル内を駆け抜け観光ツアーバスに駆け込むのである。
10 時間でオランダ全土を見るために。。
02 背景  
  b) ツーリズム:10時間のゴーストタウン  
   
(2) マッシブツーリズム
  フェリーは三隻が同時に停泊できるキャパシティが用意されている。
  1隻当たり2500人として最大で7500人が一斉にオランダに到着しパスポートコントロールになだれ込む。
  それは500人乗りのB777型の旅客機15機が同時に中央駅の裏に着陸する衝撃に等しい。
02 背景  
  c) 既存計画案の問題点  
   

(1) バスターミナル / 既存の計画案ではバスが14台分しか待機させることができない(本来は32台分必要)。
(2) ボトルネック / また出入り口が一カ所なため、内部でUターンせざるを得ず速やかにバスが出発できない。

02 背景  
  c) 既存計画案の問題点  
   

(2) その他の場所でも乗客の動きを集団としてとらえると出入り口でスタックし行列ができる。
(3) 年間利用率:冬眠するビル / オフシーズンの冬の間、利用者がほとんどなく、パスポートコントロール背後のスペースは全く使われなくなる。

03 目的と解決方法  
   
客船ターミナルがはらむ多数の境界線をラジエータやフィルターのひだのように波状にグニャグニャにまげて長くすることで大量の旅客を短時間でビルから街中に解き放つ。
03 目的と解決方法  
  a) インターフェースの機構:ラジエーターとフィルター  
 
肺や腸のつくりにもいえることだが、ラジエーターは内燃機関の熱エネルギーを空気中に速やかに解き放つ機構である。
またフィルターはある流体を速やかに濾過させる機構である。そのために単位体積当たり最大の表面積を持つ。
03 目的と解決方法  
  a) インターフェースの機構:ラジエーターとフィルター  
   
客船ターミナルがはらむ多数の境界線をラジエータやフィルターのひだのように波状にグニャグニャにまげて長くすることで
大量の旅客を短時間でビルから街中に解き放ち、オランダを観光する時間を少しでも長くする事が目的である。
第2にはこうして客船ターミナル自体のボリュームを削減し、あまったスペースを隣地のホテルに貸し、
収益のない冬を乗り切ることを目的とする。
03 目的と解決方法  
  b) インターフェースの要素:ビルディング・リサーチ  
 
このようなラジエーターの機構を建物の各所で適用するためにそれぞれのエレメント、例えばバスの寸法、回転半径を調べ、
個々のエレメントをどのように配置するか法則を決めて、敷地の形状に適応させるための試行錯誤を繰り返す。
03 目的と解決方法  
  C)’ 群生のモジュール  
   
建築資料集成’などの一般的なデータ集が単一のモジュールを主に扱っているのに対して、
動植物が群生すると異なる振る舞いをするように、曲線上に多数エレメントを配置した場合にでる別解を示す目的を持つ。
04 乗客とアムステルダムの境界線:バスターミナル  
     
最初に最も神風ツアリズムに直結し、モジュールも大きいバスターミナルの問題から取りかかる。
04 乗客とアムステルダムの境界線:バスターミナル  
  a) バスのモジュール(micro)  
   
バスの運転手がハンドルを左にいっぱい切り、続けて右にいっぱい切った軌跡をモジュールとする。
このモジュールを並べるとバスとバスの軌跡に間に乗客の乗り降りに充分なスペースができる。
04 乗客とアムステルダムの境界線:バスターミナル  
  b) 34台のバスが同時発車できる配置  
バスの出入り口を4ケ所設け内部でバスがUターンせずにすむ動線を確保する。
04 乗客とアムステルダムの境界線:バスターミナル  
  b) 34台のバスが同時発車できる配置  
前記のモジュールを当てバスの軌跡を検証。
04 乗客とアムステルダムの境界線:バスターミナル  
  b) 34台のバスが同時発車できる配置  
バスのボリュームを加味してさらに検証。
04 乗客とアムステルダムの境界線:バスターミナル  
  b) 34台のバスが同時発車できる配置  

34台のバスの駐車位置の検証。

04 乗客とアムステルダムの境界線:バスターミナル  
  b) 34台のバスが同時発車できる配置  

乗降スペースの形状と位置の検証。
04 乗客とアムステルダムの境界線:バスターミナル  
  c) 冬の利用法  
オフシーズンの間、多数のS字カーブを利用して、大型自動車免許の教習場になる。
05 構造計画と動線計画  
     
   
構造ネットワークが動線ネットワークになる。
05 構造計画と動線計画  
  a) 柱の配置計画とエスカレータの配置  
   
34台のバスが地上レベルを占拠し、柱を配置することが困難になる。
05 構造計画と動線計画  
  a) 柱の配置計画とエスカレータの配置  
   
それに伴い柱、梁は太くなる。
そこでエスカレーターまたは階段と一体化した太さ1.7mの柱を乗降エリアに1本ずつ配置する。
05 構造計画と動線計画  
  a) 柱の配置計画とエスカレータの配置  

二台のバスに一つのエスカレーターまたは階段を配置することでレセプションからバスターミナルへで滞ることなく移動することが
できる。
05 構造計画と動線計画  
  a) 柱の配置計画とエスカレータの配置  
   
柱のネットワークは上下の動線をになう。
05 構造計画と動線計画  
  a) 柱の配置計画とエスカレータの配置  

バスの動線を遮らないように柱と柱は25mのスパンが必要になる。
25mの円をそれぞれの柱を中心に描きその交点にさらに新たなコラムを配置する。
05 構造計画と動線計画  
  b) 梁のネットワーク  

これらを三角形化するように梁でつなぐ。こうしてできたビームのなかにサービス動線を通す。
05 構造計画と動線計画  
  b) 梁のネットワーク  
   
内部が中空の梁は通路として高さ2.7m, 幅1.7mに設定し平均25mのスパンに対して冗長性を持たせる。
構造ネットワークが動線ネットワークになる。フィーレンディール・ストラクチャーであることでブレースを必要としないこと、
また梁のネットワークが三角形化されていることで、各々の梁を構成する束材の配置にさらに自由度をもたせる。
05 構造計画と動線計画  
  c) ウエファー・フロアー  
   
このサービス動線によって囲まれたスペースにオフィス、7500人用の旅客用倉庫、機械室など非共用空間をスラブの中に収める。
05 構造計画と動線計画  
  c) ウエファー・フロアー  
   
これらのスペースのキャラクターによって通路に面した仕切壁の仕上げを透明、半透明、不透明にする。
仕切壁の仕上げ材料はまちまちだが全てレンガパターンで統一する。表層的なダッチネスを売り込む。
05 構造計画と動線計画  
  c) ウエファー・フロアー  
   
これらのスペースのキャラクターによって通路に面した仕切壁の仕上げを透明、半透明、不透明にする。
仕切壁の仕上げ材料はまちまちだが全てレンガパターンで統一する。表層的なダッチネスを売り込む。
06 乗客と国の境界線  
     

乗客の種類によって通り抜けなくてはいけない境界線が異なる。
電車の切り替え線のように、動線をシステマチックにかえることで乗客の種類をソーティングする。
06 乗客と国の境界線  
  a) パスポートコントロール  
 
冬の間デッドスペースとなるパスポートコントロール背後のスペースをなくす。海側のエントランスにパスポートコントロールを
折れ線上に配置する。
06 乗客と国の境界線  
  a) パスポートコントロール  
 
冬の間デッドスペースとなるパスポートコントロール背後のスペースをなくす。海側のエントランスにパスポートコントロールを
折れ線上に配置する。
06 乗客と国の境界線  
  b) 乗客のソーティング  
 
北面の左側は国際線及び国内線のリターンの乗客(アムステルダムが最終目的地または旅の出発地の乗客)、
右側は国内線トランジット(旅の途中アムステルダムに立ち寄る船の乗客。バゲージクレームを必要としない)用エントランスが
配置される。
06 乗客と国の境界線  
  b) 乗客のソーティング  

このように乗客の種類によって通り抜けなくてはいけない境界線が異なる。電車の切り替え線のように、動線を好適に振り分けるこ
とで乗客の種類がソーティングされるよう断面計画されている。
国際線国内線リターン客の動線には、下階からラゲッジコンベアーが上がってきて合流する。
06 乗客と国の境界線  
  b) 乗客のソーティング  
   
国際線トランジット客はバゲージクレーム、カスタムの頭上を飛び越え・・・
06 乗客と国の境界線  
  b) 乗客のソーティング  
   
・・・バスターミナルへ続く階段付近に“着地”する。
07 乗客と荷物の境界線  
     
   
カートを利用する乗客の動線は車椅子に匹敵する大きな寸法を必要とする。大量の荷物の受け渡しをスムーズに行い動線を効率よく処理することでカートの利用を押さえることができる。
07 乗客と荷物の境界線  
  a) チェックインカウンタ  
   
コーチターミナルからエスカレーターでレセプションレベルに上がると5m以内で重い荷物から解放されるようにカウンターが配置されている。
07 乗客と荷物の境界線  
  b) バッゲージクレーム  
   
荷物を待つスペース、荷物をカートに載せて移動する動線のスペースを考慮した上でオフセットし、ラインを出しベルトコンベアー
の配置を決める。頭上を国際線トランジット客が走ってゆく。
08 利用者と車の境界線:駐車場  
     
バックしなくても済むパーキングシステム。
08 利用者と車の境界線:駐車場  
     
全てのパーキングロットは2本の動線(通路)に挟まれ、車は頭から突っ込んで駐車し、出るときはそのまま前進して反対側の通路
に抜けそのまま出口へと導かれる。
08 利用者と車の境界線:駐車場  
     
全てのパーキングロットは2本の動線(通路)に挟まれ、車は頭から突っ込んで駐車し、出るときはそのまま前進して反対側の通路
に抜けそのまま出口へと導かれる。
08 利用者と車の境界線:駐車場  
     
   
このモジュールのルールに沿って柱をさけながら枝分かれするリニアーなサーキュレーションを設計する。
08 利用者と車の境界線:駐車場  
     
   
こうしてコンサートホール、客船ターミナル、オフィス利用者の車をスムーズに分ける事ができる。
08 利用者と車の境界線:駐車場  
     
   
動線の分岐点を閉じることで、例えば客船ターミナル用とレンタカー用の駐車エリアを冬季閉鎖できる。
08 利用者と車の境界線:駐車場  
     
   
オフシーズンの間、“ヘアピンカーブ”の連続する動線を利用して、ローラーブレード、自転車のサーキットコースになる。
09 建物と前面道路の境界線:タクシープール  
     
客船ターミナル前面の歩道をくねくね曲げる事で既存計画の1.5倍のタクシーが客待ちすることができる。