2007 第3回ロッテルダム国際建築ビエンナーレ レポート
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都市のヴィジョンと力/根津幸子

今年で第3回目になるビエンナーレだが、第1回目から都市を切り口としたテーマが続いている。初回はファンシー・フーベン(メカノ)のキュレーションで、「MOBILITY」をテーマに大々的に展示が行われ、第2回のアードリアン・グース(WEST8)がキュレーションした「FLOOD」展では、水害と治水をテーマにオランダの都市と世界各地のウォーターフロントに関するリサーチ展示が行われた。
そして今回は、ベルラーヘ・インスティテュートがキュレーターとなり、「POWER」というテーマで、現在さまざまなイベントと展覧会が行われている。これまでにないほど文化的、経済的、政治的にグローバライゼーションが進行した今日、都市に関るさまざまな力と現象は常に肥大化し続けている。誰が都市を作り、どのような未来を描いているのか。これがビエンナーレの大きなテーマである。

 

ビエンナーレのメイン会場となるクンスタハルの「Visionary Power」展を見てきた。ベルラーヘという機関のネットワークを生かしたリサーチ体制が今回の展示に厚みを加えている。会場は5つのテーマに分かれ、テーマごとに一人のリサーチャーがつき、彼らが都市のキュレーションを行っているが、世界14箇所の都市がトピックとして挙げられている。テーマは、「Capital City」「Corporate City」「Spectacle City」「Informal City」「Hidden City」。「Capital City」の展示ではカザフスタン、ベイルート、モスクワ、「Corporate City」からは廊坊、釜山、ニュージャージー、「Spectacle City」ではインスブルック、ハバナ、ローマ、「Informal City」はメキシコシティ、サンディエゴ、サンパウロ、「Hidden City」ではヨハネスブルグ、セウタが取り上げられている。

 

「Capital City」の展示は、民族国家が成立しなくなってから計画された都市においても、都市の中心性は、やはり地政学的なものであり文化的なものであるという事実に焦点を当てている。カザフスタンの例では、1997年に大統領が表明した首都移転に伴う大都市計画の経緯と、現在進行中のプロジェクトを展示している。ベイルートは15年間の市民戦争により、都市機能が地下に潜り網の目のように発達する一方、地上はテントで埋め尽くされた様子を写真とダイアグラムで示している。モスクワは400個の住宅塔に関する展示を行っている。

 

展示の中で金賞を取ったのは「Informal City」をリサーチしたサンパウロのチームである。リサーチ対象のサンパウロは19世紀の工業化の後、20世紀に入って人口が25万人から、1億8千万に膨らんだ都市である。同じブラジルの首都、ブラジリア規模の都市が35個、新しく生まれたことになる。この大規模な都市の肥大化により、大きく2つの問題が生じてきている。ひとつは経済基盤の近代化をどう図るか。もう一つは、個人が非合法にシェルターとしての住まいを作り続けていることである。つまり、都市としてのインフラ基盤が伴っていないのが現状である。
1990年以降、水道局では度重なる洪水被害への対策として、マイクロドレイネージというシステムを導入することとなる。ポルトガル語で「特大プール」という意味のこのシステムは、水溜めを都市のいたるところに配置するという計画である。現在までに39箇所の建設がなされ、131箇所すべてが完成すると155万リットルの水を溜めることができる。乾期には、その場所が、現在不足しているパブリックスペースにもなるというものである。都市のインフラを通してマネージメントしたデザインの分かり易さと、その規模が受賞の要因となった。

 

さて、展示会場にはもう一つ隠れた目玉がある。それは「Hidden City」の展示の中に置かれたレム・コールハースのドローイングだ。現代の都市に対して焦点を当てた展覧会の中で、過去の建築家のドローイングを展示しているのはこのセクションのみである。1972年に描かれたドローイング3点は「S,M,L,XL」の始めに出てくる「エクソダス、あるいは建築の自発的な囚人たち」の物語である。「かつて都市はふたつに分けられた。ひとつは良い半分となり、もう片方は悪い半分となった。」というプロローグから始まるこの物語は、「21世紀の都市のキャンプ化という現象に対して建築家はどう答えるのか」という、このセクションのテーマと重なる部分がある。ここで言うキャンプとは難民キャンプや臨時宿泊所のことであり、グローバル化が抱える都市問題のひとつである。「Hidden City」とは、まさに隠れた都市であり、ビエンナーレはそれを一つの集合体として分類している。

 

展覧会を見て、都市を作っているパワーとは、自然/人工、マス/個、歴史/未来などのような、あらゆるベクトルが、あらゆる方面から同時多発的に存在していることなのだと思えた。また、全体を通して、都市というテーマは時間軸があるため、建築のデザインとは違い、年代を追って読み取っていくような物語性のある展示内容となっている。
クンスタハルの中ではその他、オランダの未来図の展示とパワーレクチャーが開かれている。次回はいくつかのレクチャーの内容に触れてみたいと思う。

(第3回へつづく。敬称略)

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クンスタハル展示スペースのエントランスの様子
「Informal City」の展示スペース
「Capital City」、ベイルートに関する模型
レム・コールハース「Exodus」のドローイング
「Corporate City」、廊坊に関する模型
「Spectacle City」、ローマに関する模型
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