第1回リスボン建築トリエンナーレ2007 レポート
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リスボン建築トリエンナーレ レポート HOME
リスボン発の国際建築展/志岐豊

6月にリスボンを訪れると、町中の至る所で、紫色の花をつけた街路樹を目にする。ジャカランダというこの花は、リスボンの初夏の風に揺れ、その花びらを街路に落とし、町に彩りを与えている。ジャカランダの咲くこの季節は、リスボンが一年で最も盛り上がりを見せる、祭りの季節でもある。6月13日のサント・アントニオ祭へ向けて、リスボンの町は日ごと、熱気を帯びてくる。

第一回リスボン建築トリエンナーレは、そんなリスボンの熱気を先取りするかのように、先月5月31日に開幕した。アルヴァロ・シザ設計のポルトガル・パヴィリオンのキャノピーには、ポルトガルで初めて開催される国際建築展の開幕の瞬間を見ようと、国内はもちろん、世界各国から大勢の人々が駆けつけた。総合ディレクターのジョゼ・マテウスが関係機関に謝辞を述べ、スタッフの労をねぎらうと、会場は拍手と大歓声に包まれた。

5月31日から7月31日まで2ヶ月間に渡るこのトリエンナーレは、1998年にリスボン万国博覧会が開かれたパルケ・ダス・ナソンイス地区、通称エキスポと呼ばれる地区を中心に開催されている。メインの会場となるのは、「各国の展示」や「ポルトガルの展示」*1)が行われているポルトガル・パヴィリオンである。ヴェネチアの建築ビエンナーレのように各国のパヴィリオンが独立した建物として存在するわけではなく、このポルトガル・パヴィリオンを各国セクションに分けて展示を行っている。会場構成はコンペ形式で案が募られ、リスボンの建築家リカルド・バック・ゴルドンの案が採用されている。床には青く塗装したOSB材(木の削片を用いた木質ボードの一種)が敷きつめられ、それが展示スペースと順路を示している。キャノピー下の大小の青いブロックは建物内側から飛び出した展示スペースであり、建物の内外を行き来するダイナミックな展示空間が創出されている。

5月31日から6月2日までの3日間、オープニングイベントとして、世界各国の建築家によるシンポジウムが同じくエキスポのカモンイス劇場で開催され、本トリエンナーレのテーマである「Urban Voids」を軸とした6つのテーマについて議論が行われた。定員800名の会場チケットは開幕10日前に既に完売しており、その盛況ぶりを見せた。また、6月中旬からは、エキスポ以外の市内各地、あるいはリスボン近郊のカスカイスにおいて、様々な展示、シンポジウム、コンサート等が開催される予定である。

ところで、今回が第一回目のリスボン建築トリエンナーレだが、ポルトガルのリスボンで国際建築展を開く意義とは何であろうか。その答えはトリエンナーレが閉幕してから明らかになっていくことであるのかもしれないが、リスボンの建築設計事務所に勤務する立場から、開催の背後にあるポルトガル建築界の事情に触れながら、その意義を考えてみたい。

第一に、本トリエンナーレは、ヨーロッパの周縁国ポルトガルの建築を世界にアピールする絶好の機会となるだろう。アルヴァロ・シザ、エドゥアルド・ソウト・デ・モウラなど、ポルトガルの建築家は国際的な注目を浴びてきたが、逆に言えばそれ以外の建築家は世界的に見ればほとんど知られていない。

では、なぜリスボンか。それを考えるにあたり、ポルトガルが欧州連合に加盟したことで、リスボンが他のEU加盟国の都市同様に、欧州の都市間競争に巻き込まれているという事情を考慮する必要があるだろう。今回の建築トリエンナーレは、ファッションショー、映画祭などに続く、「国際都市リスボン」を世界に発信するイベント*2)の一つと捉えることができるのだ。国、市からの資金援助という点で、それがトリエンナーレを開催する実質的な推進力となっているのは確かであろう。

あるいは、リスボンを拠点に活動する建築関係者に、特別な「動機付け」があるようにも思われる。先にも述べたように、国外の建築関係者が「ポルトガルの建築」から連想するのは、ポルトを拠点に活動するアルヴァロ・シザによる数々の白い建築作品である。また、ポルトガルの名門建築スクールは、彼の代表作でもあるポルト大学建築学部であった。そういったポルトガル建築界特有の文脈からすると、リスボンの建築関係者が今回のトリエンナーレを通して、ポルトという国内の都市との対比を図りながら、「リスボンの建築」を世界に示し、そのアイデンティティを探ろうとしていることも当然ながら考えられるのだ。

2ヶ月間に渡るリスボン発の国際建築展。このトリエンナーレがリスボンを舞台にどういう議論を巻き起こしていくのか、その様子をレポートしていきたい。

※1 本トリエンナーレにおいて、「ポルトガルの展示(Portugal Exhibition)」は、「各国の展示(Countries Exhibition)」とは別の独立した展示セクションとなっている。[]

※2 リスボン市では、1991年より毎年春、秋の二回、ファッションショー「Moda Lisboa」、1999年より隔年で、デザインに関するビエンナーレ「Experimenta Design」、2004年より毎年、年に一度の映画祭「Indie Lisboa」が開催されるなど、国際的なイベントが続々と立ち上げられている。[]

(第2回へつづく。敬称略)

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旧市街地、カルモ広場に咲くジャカランダの花。
ポルトガル・パヴィリオンのキャノピーでオープニング・セレモニーが行われた。
ポルトガル・パヴィリオンのエントランスに置かれたサイン。
キャノピー下に設置された大小の青いボックス。
シンポジウムには国内外の建築家が招待された。
シンポジウムのインターバルに人々はテージョ川のほとりで休憩する。
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