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レクチャー・シリーズ:建築と写真の現在
第4回「Shooting Time:ジュリウス・シュルマンの写真と現代建築」
講師:シルビア・ラビン(UCLA都市・建築学科教授、建築評論家)

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レポート
重ね合わされた時間
レポーター:福屋 粧子

©coo ando
シルビア・ラビン氏のレクチャーは、はじめて東京を体験した印象と自身が以前から知っていた写真的な東京のイメージの違いという親しみやすい導入から始まったが、写真家と建築家がどのような影響関係にあったかという複数のケースを分析することで、現在も形を変えて続く、写真と建築の相互関係、もしくは共犯関係について改めて考えさせられるものであった。


シュルマンとノイトラ

写真家ジュリウス・シュルマンと建築家リチャード・ノイトラは、ミッド・センチュリー・モダンの時代を代表する写真家と建築家である。2人の関係を表すものとしてラビン氏が示した写真では、ノイトラとシュルマンが共にカメラの後ろに立ち、映画監督と撮影監督のようにカメラの向こうを見つめている。2人のコラボレーションは、1936年にシュルマンがたまたまノイトラの工事中の作品を撮影した写真が、建築家の目に止まったことから始まった。ノイトラはそこで新たな視点から発見された自分の作品に出会い、その後2人は長くコラボレーションを続けてゆく事になる。2人は単に撮影対象を提供し、建築を撮影するという関係ではなく、新しい建築のイメージを写真の中に共に生み出そうとする、建築家と写真家のある種理想的な関係だったと言えるだろう。
重ね合わされた時間
また、ミッド・センチュリー・モダンの建築のイメージそのものが、その他の建築表現ではなく、シュルマンの写真を通じて一般化していったことをラビン氏は指摘する。当時の現代建築への憧れは「シュルマンの写真の中に住みたい」ということでもあった。例えば、ケーススタディ・ハウス#22(1958)の室内からの夜景写真は、数分にわたる長時間露光によって撮影されたため、小物はすべてセッティングされ、室内の俳優は談笑ポーズのまま静止を強いられていたという。他の建築写真においてもシュルマンは、夕方の光、リビングの明かり、プールの水面の反射、星の瞬きなど、同時には出現しない数多くの瞬間的な光を長時間露光によって1つの写真に記録し、建築を通り過ぎるだけでは分からない建築の中の生活像を写し出している。これらの理想的なリビングのイメージは、現代の建築デザインで再び設計に引用されるなど、一般と建築専門家双方に深い影響を与えている。
シュルマンが"Shooting Time"(時間を撮影する)と表現した、長時間露光によって建築の一瞬性を記録したイメージは、建築そのものよりも長い時間と範囲にわたって影響を与え続けているのだ。また逆に、写真が残されなかった建築作品は、そのデザインの完成度に関わらず世に知られずに終わる可能性もあるとラビン氏は指摘している。

©coo ando
建築のイメージ
またその他のケースでの建築と写真の関係として、ラビン氏は、エズラ・ストーラー、ル・コルビュジェ、ディラー+スコフィディオ、コールハース、イームズ、ミース、ヘルツォーク、バンハム、007シリーズ映画への住宅作品の登場例から、それぞれの建築家・写真家が、写真・コラージュ・映画・フォトショップという次々と出現する映像技術を取り入れることで、建築デザインの新しい領域が切り開かれてきたと論じている。

さまざまな例を出しつつ、ラビン氏は建築と写真の関係を可能性に満ちたものとして語っている。建築と写真が、建築写真というフィールドにおいて相互依存的な影響関係にあるというばかりでなく、建築と写真の両方が、お互いを表現対象かつ表現媒体として必要とし続けるからこそ、その相互作用が常に新しい建築デザインを生み出す原動力であると改めて感じられたことは、一瞬の永遠を表現する建築デザインに関わるものとして勇気づけられる講演であった。
プロフィール
■福屋 粧子(Shoko FUKUYA)
1971年生まれ、建築家。福屋粧子建築設計事務所代表。東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。1999年-2004年 妹島和世+西沢立衛/SANAAを経て、2005年現事務所設立。現在、慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科助教、東京理科大学・神奈川大学非常勤講師。
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