TN プローブでは、これまで、社会の変化の中における都市と建築のありようを、建築家、都市計画家、評論家などの思考を通じて考える試みを行ってきた。レクチャー・シリーズ「建築と写真の現在」は、そうした都市と建築の状況を、「写真」というメディアとの関係において考えていこうとするものである。
建築や都市への理解は、実空間を訪れ体験することでこそ可能となる、とする定説には異論の唱えようはないだろう。しかし現実には、その実空間を体験できる機会は必ず訪れるとは限らず、多くの場合、情報はそれを代替する写真というメディアによって伝達され、理解され、記憶され、そして蓄積されることになる。さらに言えば、批評すらその代替メディアの情報に因ることも少なくないかもしれない。建築・都市の議論が、こうした蓄積に大きく作用されているとするならば、写真に表される建築・都市の表象の問題について、今、改めて見つめ直すことは興味深い作業である。
また一方で、写真は、実空間を自らの身体でなぞり体験するものとは異なる、もうひとつの空間体験を実現する魅力的なメディアでもある。そこには、事実を記録するということにとどまらない、全く別の視線によって、それまで気づくことのなかった世界を表現することが可能であるからだ。ここでは、多くの現代写真作家が、都市・建築という被写体に接近し、自らの視線を投影することで、それまでとは違った空間認識や身体感覚を表現する作品に注目している。
本シリーズでは、歴史の中で建築と写真はどのように関係し影響し合うのか、その関係は建築の見方や作られ方にどう作用するのか、また社会の事象の変化に最も敏感な作家たちが、建築や都市の表象をどのように捉えようと試みているのか、等の問い掛けを通じて、我々自らが、建築や都市を見る新しい視線を開拓し、その経験を改定してゆくことが出来ればと考える。
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